肝臓の腫瘍の画像検査
〔超音波検査〕
【メリット】
●小病変の検出にも優れ2cm前後の腫瘍の検出率は約90%以上で、1cm以下の結節も発見できるようになってきた。
【デメリット】
●死角が存在する(体深部・体表面・骨・腸管ガスの影響等)。
【造影検査】(最近新しく有用な造影剤が開発されました。肝臓の腫瘍は血流が豊富なため、血流を見る造影検査が極めて有用です。最近腫瘍の検査のために開発されたドプラやハーモニックなどとともに今後頻繁に行われる大切な検査となるでしょう。)
以下にメリットをまとめました。
外来、超音波検査室などで手軽に検査ができる。
ドプラ、ハーモニック等施行下で超音波用造影剤を使用することにより通常では得ることの出来ない微細血流も描出しCT造影に匹敵する診断能を有する。
副作用が他の造影検査と比較して非常に少なく遅発性の副作用も無いため、安全にCT,MRI造影に近い情報を得ることが出来る。
主な副作用として嘔気、注入部の疼痛、冷感、熱感などが時にあります。
実際の画像です。約2cmの腫瘍が超音波検査でわかります。
造影すると腫瘍部分が赤くなってきており、血流に富む腫瘍である事がわかります。
〔CT検査〕
MRIより検査時間が短くてすむ。
●腹部領域での有用性は高く、早期診断では超音波検査に劣る場合もあるが、質的診断には不可欠である。
【デメリット】
【造影検査(レントゲン・CT)】
禁忌:ヨウドまたはヨウド造影剤に過敏症の既往歴のある患者・重篤な甲状腺疾患のある患者
主な副作用:ショック、アナフィラキシー様症状、急性腎不全、過敏症(蕁麻疹等)、悪心、嘔吐など。
遅発性の副作用にも注意が必要
血管造影検査とCT検査との比較
*血管造影検査*
血管造影検査:肝動脈造影である選択的腹腔動脈造影と選択的上腸間膜動脈造影は多血性病変の検出、動脈の形状及び解剖の描出に優れており、HCCの肝内転移の検出や病変の質的診断、術前の動脈解剖及び進展度診断以外に、治療も可能。
診断適応用:各種血管撮影、DSA。
治療適応用:IVR(塞栓術・動注療法・血管形成術等)。
*CT検査*
●DynamicCT:急速静注法を利用したdynamicCTは病変の血行動態や血管性病変の診断が可能であり正常組織と病変との経時的分離能が高く、病変の質的診断能も非常に高い。
●動注CT:CTAとCTAPはともに優れた検査法であり、血管造影時に施行され、特にCTAPは肝腫瘍病変の検出能が高い反面、手技が煩雑で、被験者への侵襲や負担が大きい。このため、確定診断に使用される。
〔MRI検査〕
癌の大きさを正確に診断でき、解剖学的な位置関係の把握には特に有用。
組織間コントラストが高い(CTでは識別できない軟部組織や病変の描出が可能となる場合もある)。
造影剤を使わずに血管撮影も可能。
【デメリット】
動きのある部位の撮影が困難、撮影時間が長い、消化管の識別が難しいなど
疾患特異性が低い→造影剤の使用
【造影検査】
細胞外液に分布し血管に富んだ腫瘍を明化し血管腫と他の腫瘤の鑑別に有用だが、腫瘤の血流状態の評価は困難であり、腫瘍の存在診断の効果は少ない。肝癌など血流の豊富な腫瘤ではdynamicMRIが有用であり、dynamicCTと同様に腫瘍の血行動態評価や存在診断が可能となる。主に鑑別診断に利用される。
主な副作用:ショック、アナフィラキシー様症状、痙攣発作、過敏症、嘔気、嘔吐など。
●MRI用肝臓造影剤(超常磁性酸化鉄コロイド)肝臓のクッパー細胞に貪食され、正常肝を暗化しクッパー細胞を持たない腫瘍はコントラストが向上し、肝癌、転移性肝癌の存在診断、特に他臓器癌からの肝転移のスクリーニングに有用。また、クッパー細胞を有する腫瘍(FNH、AH)と古典的肝癌との鑑別も可能。ただし、高分化型HCCにはクッパー細胞が残存しており、鑑別には注意が必要。
主な副作用:ショック、アナフィラキシー様症状、過敏症など。
鉄製剤特有の副作用として腰痛、背部痛がある。
禁忌:一般状態の極度に悪い患者、ヘモクロマトーシス等鉄過敏症の患者等。
まとめ
画像診断は慢性肝疾患の進展の判断以外に、腫瘍の発見に大変有用です。
幾つかの画像診断がありますが、血液検査以外にそれぞれの画像診断を組み合わせて診断していく事が大切です。