インターフェロンを中心にしたサイトカインネットワークの説明

IFNの特徴としてサイトカインについて御説明いたします。


人間には外から侵入した細菌やウイルスといった"異物"に対してそれを排除し生体を 守る機構、すなわち『免疫』があります。『免疫』の一種にサイトカインネットワークが あります。この図はこの免疫の機構におけるサイトカインネットワークを示します。
サイトカインは免疫担当細胞(Tリンパ球、Bリンパ球-抗体産生、マクロファージ)間の 情報伝達をになう物質であり、様々な種類の総称です。微量で強い活性を示すのが特徴です。 それぞれのサイトカインが図のようにネットワークを形成し互いに制御しあいつつ、免疫担当 細胞を活性化したり時には抑制的に働いたり、直接癌細胞のような標的細胞を攻撃したりする 種々の作用を持ちます。
サイトカインネットワークの特徴の一つは、一つのサイトカインが複数の性質を持ち、また 一つの作用を複数のサイトカインが担うことにより互いに機能を補い合っている事です。 つまり多機能・多重性がサイトカインの特徴です。

サイトカインの種類
IL:インターロイキン・IFN:インターフェロン・その他

リンパ球
リンパ球系組織(リンパ球、脾臓、胸腺、骨髄、リンパ球)や血液中に存在する細胞。
Tリンパ球、Bリンパ球等に分けられる。

抗体

抗原刺激の結果、免疫反応によって生体内に産生されるタンパク質で、抗原と特異的に 結合する活性をもつものをいう。



インターフェロン(IFN)の種類と主な性質
サイトカインの一つであるインターフェロンの特性(特徴)について見てみましょう。 IFNとは抗ウイルス作用と抗腫瘍作用を併せ持つタンパク質で、T型α、β、U型γなど があります。作用するレセプターや遺伝子座の違いから、大きくα、βのT型、γのU型に 分けられます。T型IFNのα、βの性質が良く似ているのに対し、U型IFNのγは作用も 違うといわれています。一般的にT型は抗ウイルス作用がU型に比べて強いといわれ、U型 ではin vitroにおいて抗腫瘍作用が強いといわれています。


インターフェロンの作用機序
インターフェロンは、生体内で産生されるサイトカインで、免疫系に働き、抗ウイルス作用 と抗腫瘍作用を併せ持ちます。

抗ウイルス作用
2-5AS(オリゴアデニール酸合成酵素)、PK(プロテインキナーゼ)、2PDE(ホスホジ エステラーゼ)といった抗ウイルス蛋白を誘導します。

免疫調節作用
T細胞、NK細胞、マクロファージなどの免疫担当細胞を活性化することにより、間接的に、 ウイルスに感染した細胞や、癌化した異常な細胞を破壊します。また腫瘍細胞表面に HLA-ClassT抗原の発現を増強し、細胞自体に変化を与えることにより、腫瘍細胞が免疫 担当細胞に攻撃されやすくします。

細胞増殖抑制作用
腫瘍細胞のDNAの合成、複製やその先の蛋白合成に必要なmRNAの合成を抑制する ことにより増殖を抑制すると考えられます。

Q&A:インターフェロンはどんな時に分泌されるの?
インフルエンザウイルスに感染した時などに生体では通常、IFNが産生されます。分泌されたIFNは免疫能を高めその結果、発熱や悪寒といった風邪様の症状を引き起こします。IFN投与時にみられる副作用のインフルエンザ様症状はIFNの作用としてごく自然なことなのです。




IFN−αの免疫調節作用
免疫調節作用について図で示します。
免疫担当細胞であるT細胞、NK細胞、マクロファージなどを活性化します。活性化された 免疫担当細胞が、ウイルス感染細胞、癌化した異常な細胞を破壊します。また腫瘍細胞や ウイルス感染細胞の表面にHLA-ClassT抗原の発現を増強し、細胞自体に変化を与えます。 HLA-ClassT抗原が細胞表面に発現することにより、免疫担当細胞は、異常細胞を異物と認識 し攻撃しやすくなります。



IFN−αの抗ウイルス作用
抗ウイルス作用を簡単にまとめるとこのような図のようになります。

戻る