肝硬変に対するBCAA製剤

アンモニア源を減らすためには低蛋白食にしないといけないが、じつは肝硬変の患者さんでは窒素バランスを維持するためには、現実には、健常人に比べると1.3倍のアミノ酸が必要である。
蛋白質の量をたくさん必要としているのに、病態的には蛋白質の量を制限せざるを得ない。
そのジレンマを解決すべくBCAA製剤(アミノレバンEN ヘパンED リーバクト)が開発された。

大阪市立大学の山本先生が退官記念の御講演で、肝臓の予備能の指標とは何であるのかということを話されました。
左のグラフは一般的な肝硬変患者さんの累積生存率をみているわけですが、それによると5年たつと半分ぐらいの方が亡くなられるということです。
右のグラフは患者さんの背景の中からアルブミンの値でもって層別してみたものですが、そうするとアルブミンが3.5g/dl以上の群では比較的予後が良いということがわかってきました(3.5g/dl以下では生存率が低下する)。

肝硬変の患者さんは、もともと肝臓の線維化のため肝細胞が減少しており、各種貯蔵能が減少しています。
とくに、グリコーゲンの蓄積能力が少なく、食後は糖の取り込みが障害されているため高血糖になりやすく、逆に夜間から早朝にかけてはグリコーゲンが枯渇して、極端な飢餓状態が存在し、エネルギーの確保として筋肉を崩壊させて補っております。
肝硬変で筋肉が徐々に減少していくなど蛋白異化の亢進はこのような原因にもあるようです。そのような状態が長くつづきますと肝硬変の病態の悪化をまねくと考えられます。

肝硬変の方の窒素出納をみたものです。
それぞれの試験食を1週間摂取させて、最後の5日間、窒素出納を測定したその平均値を示しております。
3食よりも夜食を加えた4食,6食の方が窒素出納の改善がされており、良い栄養状態が保てる事がわかりました。

肝硬変の方の、夜食の効果としまして1、日あたり1g窒素の保留効果が確認されております。これは蛋白に換算しますと6.25g 非脂肪体重、筋肉として30g/日の増加が期待できることになります。
肝硬変は進展すると蛋白不耐症というものが出て参り、蛋白質の摂取量が問題となりますが、限られた蛋白摂取量でも食事のタイミングを変えることにより、窒素を保留に差がでるということで、肝硬変患者さんは夜食を摂ることは非常に有効と思われます。

また、経口BCAA製剤であるアミノレバンENを投与することにより、肝不全患者の外来管理を容易にし、パーフォマンス・ステイタスも明らかに改善することが確認されています。

蛋白不耐をひとことでいえば、食事後のアンモニアが上昇により、脳症を引き起こすことです。すなわち、肝機能の低下により、食事由来のアンモニアの処理ができなくなっているわけです。
そのような場合、蛋白量を減らすことで(低蛋白食)、ある程度アンモニアのコントロールが可能ですが、それではアルブミン値の改善は不可能です(栄養治療のジレンマ)。
そのような患者さんに、低蛋白食と経口BCAA製剤(アミノレバンEN ヘパンED)を併用することでアンモニアのコントロールと栄養改善の両方の効果が得られます(ジレンマの解決)。
一般的に、アミノレバンEN3包を使用した場合、食事蛋白も含めた1日の摂取総蛋白量が100gを越えても、脳症は起こらないことが多いようです。

市田先生らのご検討ですが、肝性脳症の既往のある非代償性肝硬変の患者さんを対象に、経口BCAA製剤であるアミノレバンENを1日3回、1年間投与されました。
その結果、血清総蛋白質およびアルブミン値は、長期にわたり有意に改善しました。

         


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