日本肝臓学会指導医  T.F


今年4月よりC型慢性肝炎に対してインターフェロンの再投与が可能になりましたので対象となる条件及び治療効果 などにつきまして御説明いたします。


まずは、厚生省から保険発第34号として通知されているIFN再投与の適用条件について紹介いたします。 今回のIFN再投与は1回に限り標準的投与期間である6ヶ月以内を限度として投与可能になりました。 ご覧のように二つの条件があり、一つは初回投与にて効果があった症例、二つ目はウイルスのタイプ 或はウイルス量が該当する症例で、この二つの条件を満たす場合に再投与が可能になります。 最初の条件である「効果があった症例」とは、初回投与終了時点でHCV RNAが陰性化或はALTが正常化した 症例もしくは厚生省効果判定基準で有効以上の効果が認められた症例です。 ここでいう有効とは、投与終了後、6ヶ月以内にALT値が正常上限値の2倍以下に改善し、 その後6ヶ月以上持続した症例です。
次に二つ目の条件であるウイルスのタイプ或はウイルス量が該当する症例とは、 HCVセロタイプで1以外或はジェノタイプで1b型以外、或は、再投与開始前のウイルス量がプローブ法で 1メック以下或はアンプリコア法で100Kコピー以下の症例で、このタイプと量のどちらかを満たせば再投与可能です。
次の図ではセロタイプとジェノタイプの関係を紹介いたします。

 人の血液型がA・B・O・AB型とあるようにC型肝炎のウイルスも幾つかの種類があります。以前はジェノタイプ1型、2型などと言っていましたが今では1a型・1b型などと区別されるようになりました。T型とは1a型を示したもので、それぞれU型は1b型、V型は2a型、W型は2b型となります。また、セロタイプとは4つの型を大きく2つに区別したものでセログループ1とはジェノタイプ1a型或いは1b型のどちらか、セログループ2とはジェノタイプ2a型或いは2b型となります。表の( )の中に日本人に占める割合を示しました。インターフェロンの効きにくいとされる1b型は日本人ではC型の70%を占め、1a型は極めてまれなためセログループ1は1bと考えられます。極めてインターフェロンの効きやすい2a型とついでインターフェロンの効きやすい2b型はセログループ2となりセログループだけでは2a型・2b型の区別はできません。尚、ジェノタイプは保険適用がとおっていませんがセロタイプは保険適用されています。

さて、それではIFN再投与の治療効果について御説明いたします。
こちらは再投与を行った場合のウイルス量別、セロタイプ別の効果を見たものです。初回投与と同様、再投与でもウイルス量が低い人、またセログループ2の人において約50〜80%程度の高い著効率が得られることが確認されています。尚、今回の再投与治療対象症例は、この100KIU/ml以下或はセログループ2になっています。
また、初回投与終了時にALT値が正常化、或いは終了時点でウイルスが一時的に消えた症例では、再投与により完全著効が期待できると言われております。さらに、再投与の治療効果と総投与量との関係をみますと総投与量別のALT正常化率及び完全著効率ともに、総投与量が多ければ多いほどその治療効果は上がるとも言われております。
 製剤を変えた場合の治療効果については遺伝子組換え型からその他のインターフェロンへの変更とその他のインターフェロンから遺伝子組換え型への変更とで比較した場合、切り替える製剤の違いによる有意な違いはありませんでした。

以上、今までお話したことをまとめてみますと再投与での効果予測因子としてはセロタイプ2型或いはウイルス量が100KIU/ml以下の方が著効を得やすい。インターフェロン初回投与終了時にALT値が正常化或いはウイルスが一時的に消えたいわゆる「効果があった」症例に対して、高用量インターフェロンを投与すると著効を得やすい。製剤を変えることは最終的な治療結果に影響を与えない。と考えられます。


ではここで再投与で著効が得られた例を紹介します。インターフェロン初回投与後再燃した患者さんにインターフェロンの連投期間を2週から4週に増やし週3回の間歇投与を2週間合計6ヶ月間投与をしたところALTは正常化しウイルスも消失しました。このため強ミノの注射もすることなく現在元気に仕事をされています。

参考として4週間連投後+週3回間歇投与で20週間、合計24週間での各種インターフェロン製剤の費用を示しました。現在のところインターフェロンβは8週間までしか使用が認められていないため図には載せておりません。


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