B型慢性肝炎に対するラミブジン療法とHBV DNAラミブジン耐性遺伝子

 

ラミブジンの構造と作用機序
HBVに対する増殖抑制効果

○本薬剤はヌクレオシド(シチジン)誘導体の抗ウイルス剤で、細胞内でリン酸化され活性型となります。

○本薬剤は、HIV同様、B型肝炎ウイルス(HBV)に対しても増殖抑制効果を示します。

○作用機序は二つあります。

  1.ウイルスのRNA依存性DNAポリメラーゼ/逆転写

酵素の基質(dCTP)の取り込みを競合的に阻害。

  2.ウイルスDNA鎖に取り込まれ、その伸長を停止。

 

ラミブジン投与による効果

○HBV-DNA量を減少させ、抗ウイルス効果を示します。

○ALT(GPT)値を低下させ、肝機能を改善します。

○肝組織像を改善します。(HAIスコアの減少)

          今後の期待

 

ラミブジン耐性株
(ラミブジンの長期投与によるYMDD変異株の出現)

○HBV増殖にかかわるDNA polymeraseの活性部位を形成し、

  ヌクレオシドが結合活性を有するYMDD motifと呼ばれるアミノ酸配列があります。  (Y: チロシン、M: メチオニン、D: アスパラギン)

                                     (V: バリン、I: イソロイシン)

○YMDD変異ウイルスでは、このYMDD motif が YVDD やYIDD へ変異しており、DNA polymeraseの立体構造が変化しています。 その結果ヌクレオシド誘導体であるラミブジンに対する感受性が低下し、薬理効果が低くなります。

○YMDD変異ウイルスの出現頻度は、長期投与ほど高くなります。

    ○肝硬変への治療効果

    ○肝移植例への治療効果

治療方針の決定及び経過観察検査

 

投与開始前

  HBV-DNA定量、HBV-DNAポリメラーゼまたはHBe抗原

ALT(GPT) ・・・必要に応じて肝予備能検査または肝生検

投与中

  HBV-DNA、HBe抗原、HBe抗原陰性の場合はHBs抗原

ALT(GPT)、YMDD変異 ウイルス (ウイルス増加時に必要に応じて)

投与終了後(投与終了から最低でも4ヶ月間は2週間毎、また2ヶ月間は1ヶ月毎に)

HBV-DNA 、 ALT(GPT) 及び必要に応じて総ビリルビン

継続経過観察(投薬中止後4ヶ月以上経過を観察した後)

HBV-DNA 、 ALT(GPT) 及び必要に応じて総ビリルビン

ラミブジン耐性遺伝子検査

材   料  血清

検 体 量    0.5ml

検体容器    PCR専用容器: P1

    保  存    凍結

所要日数 6 〜 12日

検出領域 DNA polymerase region

    報 告 値  YMDD (+) or (―) or ケンシュツセズ

YVDD(+) or (―) or ケンシュツセズ

YIDD (+) or (―) or ケンシュツセズ