抗ウイルス化学療法剤
B型肝炎ウイルスの増殖を伴う肝機能の異常が確認されたB型慢性肝炎におけるウイルスマーカー、肝機能及び肝組織像の改善
1.臨床効果
二重盲検比較試験を含む総症例242例の臨床成績の概要は以下のとおりである(表-3参照)。
また、B型慢性肝炎患者を対象としたプラセボとの二重盲検比較試験により、本剤の有用性が認められている。
2.投与終了後の肝機能悪化
本剤投与終了後の追跡24週間における肝機能悪化(ALT(GPT)500IU/L以上)の発現率は、16週間投与で15.0%(9/60)、32週間投与で15.9%(10/63)、52週間投与で26.9%(32/119)であった。
表-3 | |||
対象疾患名
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HBV-DNA改善率※
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肝機能ALT(GPT)改善率
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組織学的改善率
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B型慢性肝炎
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78.5%(190/242)
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71.2%(153/215)
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90.6%(29/32) |
通常、成人にはラミブジンとして1回100mgを1日1回経口投与する。
1. 本剤投与開始に先立ち、HBV-DNA、DNAポリメラーゼあるいはHBe抗原により、ウイルスの増殖を確認すること。
2. 無症候性キャリア及び他の治療法等により肝機能検査値が正常範囲内に保たれている患者は本剤の対象患者とはならないので注意すること。
3. 肝硬変と診断された患者に対する使用経験は少なく、有効性及び安全性は確立していない。特に、非代償性肝硬変患者のような肝予備能が低下している患者での使用経験はさらに少ない。
1. 本剤は通常、投与を終了するまでに長期間を要する薬剤であり、投与中止により肝機能の悪化もしくは肝炎の重症化を起こすことがある(。本内容を患者に説明し、患者が自己の判断で投与を中止しない様に十分指導すること。
2. 投与中に下記の状態に至った場合には本剤の投与終了を検討してもよい。
(1) HBe抗原陽性の患者では、HBe抗原からHBe抗体へのセロコンバージョン(HBe-SC)が持続した場合
(2) HBe抗原陰性の患者では、HBs抗原の消失あるいはALT(GPT)の正常化を伴うHBV-DNAの陰性化が6ヵ月以上持続した場合。
しかし、投与終了後に肝機能悪化が見られる場合があるため、いずれの場合であっても、本剤の投与を終了する場合には、投与終了後少なくとも4ヵ月間は原則として2週間ごとに患者の臨床症状と臨床検査値(HBV-DNA、ALT(GPT)及び必要に応じ総ビリルビン)を観察し、その後も観察を続けること。
3. HBe-SC持続に基づき投与を終了した場合、投与終了後もセロコンバージョンが長期に維持されるかどうかに関しては限られたデータしかない。
4. 腎機能障害患者では、血中濃度半減期の延長が認められ、血中濃度が増大するので、腎障害の程度に応じて、投与量の調節が必要である。
血液透析患者(4時間までの透析を2〜3回/週施行)においては、初回のみクレアチニンクリアランスに応じて減量し、その後透析中の投与量調節は必要ない。
腎機能障害のある患者[高い血中濃度が持続するおそれがある]
1. 本剤によるB型慢性肝炎の治療は、投与中のみでなく投与終了後も十分な経過観察が必要であり、経過に応じて適切な処置が必要なため、B型慢性肝炎の治療に十分な知識と経験を持つ医師のもとで使用されること。
2. 本剤の投与中は定期的に肝機能検査値の測定を行うなど十分注意すること。
3. 投与期間1年までの臨床試験成績から、本剤投与終了後の肝機能悪化は、投与前に[1]HBV-DNA量が多い、[2]ALT(GPT)値が高い及び[3]HBe抗原量が多い患者、さらに、投与中止時に[4]HBe抗原が陰性化していない、[5]セロコンバージョンを起こしていない、[6]投与期間が長い患者でより起こりやすいことが報告されている。従って、この様な患者で投与を中止する場合、投与中止後の経過観察をより慎重に行うこと。
4. 本剤の投与終了後に肝機能の悪化もしくは肝炎の重症化が認められた場合は、本剤による再治療又は既存療法が考えられるが、その有益性に関しては限られたデータしかない。
5. 本剤投与中にYMDD変異ウイルス(DNAポリメラーゼの活性中心のアミノ酸配列がYMDDからYIDD又はYVDDに変異したウイルスで、本剤への感受性が低下するため、抗ウイルス効果は期待できない)が現れた場合、本剤の投与を中止すると、それまで増殖を抑制されていた野生型ウイルスの再出現を招くので、一般的には、野生型ウイルスを抑制するため本剤による治療を継続することが有益である。しかし、一部の症例では投与中にYMDD変異ウイルスの増殖により肝機能が悪化することがあるので、観察を十分に行い、注意しながら投与を継続すること。本剤の投与を継続しても、YMDD変異ウイルスにより肝炎の症状が治療前の状態より悪化するなど、治療上の有益性が失われた場合には、投与中止を考慮すること。なお、YMDD変異ウイルスは増殖能力が弱いことが実験的に示されている。
薬剤名等 :スルファメトキサゾール(持続性サルファ剤)・トリメトプリム合剤
(本剤の血中濃度が上昇する)
臨床症状・措置方法
総症例393例中、主な副作用は、頭痛、倦怠感であった。
HIV感染症に対するエピビル錠、コンビビル錠(いずれも1錠中にラミブジン150mgを含有)の単独投与又は他の抗HIV薬との併用により、以下のような副作用が報告されている。
(1)重篤な血液障害
:汎血球減少、貧血、白血球減少、好中球減少、血小板減少
(2) 膵炎
(3) 乳酸アシドーシス及び脂肪沈着による重度の肝腫大(脂肪肝)
(4) 横紋筋融解症
(5)精神神経系
:ニューロパシー、錯乱、痙攣
(6) 心不全
1.精神神経系
5%以上
頭痛
2.消化器系
5%未満
腹痛、下痢、嘔気
3.その他
5%以上
倦怠感
4.その他
5%未満
感冒様症状
本剤の投与終了により肝機能の悪化もしくは肝炎の重症化が認められることがあり、国内臨床試験における投与終了後8週間又は6ヵ月間の観察期間中の主な有害事象として、肝機能検査値異常(ALT(GPT)上昇、AST(GOT)上昇等)が報告されている(「臨床成績」の項参照)。
1. 動物実験(ウサギ)で胎児毒性(早期胚致死作用)が報告されているので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
2. 動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されているので、授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。