コバシルについて

 

 コバシルはACE阻害薬という高血圧治療薬の種類に分類されます。ACE阻害薬は1983年にカプトリルが発売になって以来、現在まで12成分が発売になっており、そのなかでコバシルは日本においては1998年発売になった最も新しい薬です。

 コバシルの作用は、血中および血管壁などに存在するアンジオテンシン変換酵素(ACE)に結合して、その活性を阻害することにより強力な昇圧物質であるアンジオテンシンUの生成を抑制し、降圧物質であるブラジキニンの分解を抑制することによって、降圧効果を発揮するというものです。

 副作用としては特徴的なものに「空咳」(痰を伴わない咳)がありますが、投与中止により、通常1週間以内に消失します。

 コバシルは11回投与により確実な降圧効果をもたらし、心臓や腎臓への好影響、血管リモデリング改善作用が確認されていますが、最近注目されている点で、肝ガン発育抑制作用が認められています。

 ガン細胞が生体内で成長」(増殖)していくためには、そのガン細胞の中での血管新生が必要です。このため世界中でこの血管新生阻害薬の開発が進められていますが、まだ認可されているものは存在しません。一方で、現在広く普及しているACE阻害薬にガンによる死亡率を低下させるという報告があります。*(1)

 その中で特にコバシルには新生血管形成抑制効果、最も強力な肝ガン発育抑制効果が認められました。コバシルは肝ガン細胞内の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を抑制することにより、新生血管の形成を抑制することが示唆されています。*(2)