肝疾患の方の検査について

慢性肝炎で通院中の方は、通院時に多くの検査をなさっておられると思います。採血はほぼ毎回、超音波やCT検査などもなさっておられるでしょう。入院して、肝生検などの検査を行われた方も多いと思います。今回はこの検査についてご説明いたします。まずはじめに、採血して調べる検査についてご説明いたします。

採血でわかる検査

正常値とは

採血して調べる検査の中には、多くの検査があります。外来で「GPTはいくらでした。」と言うような説明を受けられた方も多いかと思います。この、GPTも採血して検査します。では、「あまり高くありません」とか「正常でした」などと言われた場合の 基準になる値 とは何でしょう。一般に「健康な人のうち95%が入る一定の検査値の範囲」を、基準値(正常値)としています。

しかし、同じ検査でも測定方法が病院間で異なっていたり、いろいろな理由で、検査する病院によって、基準値が異なっております。また、私たちの体の中の物(GPTなど)は常にある程度の範囲内で変動しているため、たとえ健康であっても状態によっては異常値となることもあります。さらに、食事の影響や採血方法の影響(極端にゆっくりと採血した場合など)なども受けます。

ですから、検査値の少しの変動に一喜一憂する必要は全くありません。素人判断で自分の病状を推測するのはやめましょう。また、1回の検査で異常値だったから、すぐに病気であると断定することもできません。

検査を受けられると結果が気になられるのは良くわかります。検査誤差も含めて、慢性肝疾患の方の検査値には変動がつきものです。1種類のしかも1回だけの検査値のみでは、専門医でも正確な病状は把握できません。複数の検査を組み合わせ、定期的な変動をみて、初めて正確な病状がわかるのです。

肝臓の状態を知るもっとも身近で簡単な方法は血液検査です。静脈から採血した血液中に含まれるいろいろな物質の量をはかることで、肝臓の炎症や働き具合、繊維化の度合いなどを推察することができます。

では、実際の検査について御説明しましょう。(下を参照して下さい)

(同じ検査で違った肝臓の能力が見られる場合も有ります。このため、同じ検査が何度も出てくる場合があります。)

主に肝臓の炎症の強さをみる検査

GOT・GPT・LDH 】

GOT(またはAST)・GPT(またはALT)・LDH は、肝細胞に多く含まれている物質(酵素です)で、肝細胞が壊れたり障害を受けると、肝細胞中から血液中に漏れ出てきます。ですから、血液中のこれらの量を測定することにより、肝細胞が現在どれくらい壊れているか(つまり、現在の肝臓の炎症の程度がどれくらいか)を知ることができます。

しかし、GOT・LDH は筋肉や赤血球にも多く含まれていて、筋肉の細胞が傷ついたときや採血時などに溶血した時などでも血液中に増えてきます(高値になります)。これに対し、GPTは特に肝臓に多く含まれているため、主に肝臓に異常があるときだけ上昇し、このため慢性肝炎の炎症の強さの指標としてはGPTが重視されます。

 GOT・GPTの基準値の上限はともに30-40単位程度です。慢性肝炎の場合、

GOT・GPTともに200-300単位程度にまで上昇することがあります。しかし、500単位くらいにまで上がっても肝臓にはまだまだ十分な余力があると考えられます。検査結果に対してあまり過敏にならないようにしましょう。

また、肝臓にはGOTの方がGPTよりたくさん含まれており、肝細胞が壊れたときにはGOTの方がGPTより高値になります(例えば、急性肝炎などの場合)。

しかしながら、GOTの方がGPTより血液中の半減期が短い(ようするに、GOTの方が分解されやすい)ために、ウイルス性慢性肝炎等では普通はGPTの方がGOTより高値となります(アルコールなどではGOTがGPTより高値となる場合が多いです。)。

一方、肝硬変に近づくと今度はGOT・GPT共に低下してきます(肝硬変では肝細胞が弱っているため、1個の肝細胞中に含まれるGOT・GPTが、慢性肝炎などより少ないと思われます。このため、肝硬変と慢性肝炎で同じ

だけ肝細胞が障害を受けても、血液中に出るGOT・GPTが肝硬変では少ないためと思われます。)。さらに、肝硬変ではGOTの方がGPTより高値となります。

また、GOT・GPTが高値の人は低値の人より、慢性肝炎では病気が進行しやすく(繊維化が進みやすい)、肝硬変では発癌しやすいとされています。

(では「GOT・GPTをどこまで下げればよいか」という質問がよくあります。私は、治療によるデメリットが少なければ低ければ低い程良いと考えています。)

肝臓の繊維化の程度・予備能力を見る検査

(予備能力:肝臓の働ける余力です。激しい急性肝炎や、肝硬変が進行すると低下します。)

肝臓の合成能力を見る検査

【 アルブミン・プロトロンビン時間・トロンボテスト・ヘパプラスチンテスト・総コレステロール・コリンエステラーゼ 等 】

これらは、全て肝臓で合成される体にとって大切なものです。

アルブミンは、血液中の主な蛋白質で、肝臓でしか作られません。肝疾患が進行すると低下し、3〜3.5g以下になってくると足にむくみが出たり、おなかに水がたまったり(腹水)します(この場合は、急激に数キロ体重が増えることがあります)。

プロトロンビン時間・トロンボテスト・ヘパプラスチンテストは肝臓でつくられる凝固(血を固める働き)因子の働きを見ています。肝疾患が進行する(肝臓の働きが悪くなる)と、肝臓で作られる凝固因子が少なくなり、血が固まりにくくなります。とくに、ヘパプラスチンテストは鋭敏な検査で激しい急性肝炎時などではよく測定されます。

総コレステロール・コリンエステラーゼも肝臓で作られるもので、肝障害が進行すると低下します。逆に、脂肪肝などでは高値となります。

肝臓の代謝機能を見る検査

【 総ビリルビン(T.Bil)・アンモニア・ICG検査 等 】

総ビリルビン(T.Bil):肝臓の代謝機能や胆汁の流れ具合をみる指標

ビリルビンは、老化した赤血球が脾臓(脾臓:左上腹部にある臓器で、肝疾患が進行すると大きく腫れてくる。)で分解されてできる黄色い物質です。ビリルビンは、脾臓から肝臓へ送られた後、肝臓で胆汁成分として合成され、小腸に排泄され、消化・吸収の手助けをして、便とともに体外へ排他されます。

肝機能が落ちると胆汁の生成や排出が障害され、ビリルビンが血液中に逆流して増えてくるので、肝臓がどの程度働いているか(予備能)を知る指標となります。肝疾患が進行すると高値となります。

肝臓で生成された胆汁は、胆管という管を通って肝臓から十二指腸へ流れます。この間にある臓器(胆管・胆嚢・膵臓など)に石・炎症・腫瘍などがあると、流れが悪くなり、血液中のビリルビンが上昇します。このため、総ビリルビンは胆汁の流れ具合をみる指標にもなります。

これら、二つの原因の区別には超音波検査が有用です。

総ビリルビン(T.Bil)とは、血液中の間接型ビリルビン(I.Bil)と直接型ビリルビン(D.Bil)の合計値をいいます。間接型ビリルビンは脾臓でできたビリルビンで、これが肝臓で水に溶けやすいかたちに変えられたものが直接型ビリルビンです。総ビリルビンの基準値は、1.2mg/dl以下です。検査値

2.5mg/dlを超えると、皮膚や眼球の白目が黄色くなり、黄垣が認められるようになり、さらに進行すると体の痒みも出てきます。

一般に、黄疸時にはビリルビンが沈着するため、血液中のビリルビンが低地に回復しても、しばらくは眼球の白目の黄疸はとれません。

また、ミカンなどを食べ過ぎたときは、手が黄色くなりますがこれは黄疸ではありません(ビリルビン以外の色素の沈着です)し、白目は黄色くなりません。

アンモニアは体内の蛋白質の代謝でできてくる老廃物です。肝臓で代謝されます。正常人でも血液中に存在しますが、肝障害が進行すると高値となります。肝硬変などで高値となると、肝性脳症という症状が出ることがあります。(肝性脳症:軽症では、少しボーットしたり、昼夜が逆転したり、気分のむらが起こったりします。重症では意識がなくなることもあります。風邪をひいたり、便秘が引き金となって起こることがあります。)

(この他にも、血液中のアミノ酸の量的な変化が肝硬変では起こり、これが完成脳症の原因になることが分かっています。すなわち、BCAAというアミノ酸が減って、AAAというアミノ酸が増加します。BCAAは、バリン・ロイシン・イソロイシンというアミノ酸で、体に大切なものです。近年、肝性脳症の改善目的ばかりではなく、肝硬変の栄養を考えた内服治療薬としても脚光を浴びています。大塚製薬のアミノレバンEN・森下ルセルのヘパンEDやリーバクト等です。)

ICG検査は、インドシアニングリーン(ICG)という青い色素を注射して15分間で肝臓でどれくらい排泄されるかを見る検査です。肝疾患が進行し、肝細胞での色素の取り込みが悪くなったり、肝臓に流れる血液の量が減ると排泄されにくくなり、高値となります。

肝臓の繊維化の程度をみる検査

【 ヒアルロン酸・P・P・・型コラーゲン7S・血小板・ICG検査・ガンマグロブリン・ZTT 】

肝炎が長期化すると、壊れた肝細胞の跡に繊維がたまっていきます。(繊維がたまると肝臓は固くなり、さらにたまると肝硬変へ進展します。)この繊維はコラーゲン(化粧品のコラーゲンとほぼ同じです)という蛋白質でできています。

ヒアルロン酸は、正常人でも血液中に存在するものです。肝臓で分解されます。繊維化が進んでくると、肝臓のヒアルロン酸の分解能力が低下し、血液中で高値となります。肝臓の繊維化を推測するよい指標です。(150ng/ml以上では肝硬変の疑いがあります。)

肝細胞が壊れ、このコラーゲンができるときに出てくるものがP・Pです。

コラーゲンが分解したときに出てくるものが・型コラーゲン7Sです。

ともに、肝硬変では高値となり、肝臓の繊維化の程度を推測できるとされていますが、慢性肝炎でも肝臓の炎症の強いときには高値となり、逆に、肝硬変でも炎症の落ソついたときには低値となります。

血小板は骨髄で作られる、血を固める細胞です。肝臓は血小板増殖因子(骨髄で血小板を作らせる作用を持つ物質)を作っています。肝臓病が進行すると、肝臓の血小板増殖因子を作る能力が低下し、血液中の血小板増殖因子が低下するとともに、脾臓が大きくなり血小板が壊されやすくなります。このため、肝臓病の進行とともに血小板数は減少し、約13万以下では肝硬変の可能性があります。GOT・GPTの変動に左右されません。

血小板数の減少は、肝臓病の進展の結果であり、血小板を増やしたから肝臓病が良くなるわけではありません。また、5万前後有れば日常生活で血が止まりにくいなどということは殆どありません。2〜3万ですと、ぶつけたりすると青あざができやすかったり、抜歯後の止血が悪かったりする場合があります。

ICG検査は前述したごとくです。肝硬変では数十%になります。

ガンマグロブリンも肝臓病の進展とともに増加します。

ZTTも肝臓病の進展とともに増加します。C型肝炎ウイルス保因者でGOT・GPT正常の方でもZTTが高値のことがよくあります。

胆汁の流れ具合を見る検査

【 γーGTP・ALP・総ビリルビン・総コレステロール 】

γーGTP・ALPは肝臓の中の胆管で作られ、胆汁中へ排池される物質です。胆汁の流れが阻害(胆管・胆嚢・膵臓などの石・炎症・腫瘍など)されると血液中に増えてきます。γーGTPはこれ以外にアルコール性肝障害や薬剤性肝障害で高値となります。アルコール性肝障害の場合には禁酒で速やかに改善します。ALPは骨の病気でも上昇しますが、原発性胆汁性肝硬変という女性に多い病気の診断に有用です。

総ビリルビン・総コレステロールも肝臓で作られ、胆汁中へ排池される物質です。胆汁の流れが阻害(胆管・胆嚢・膵臓などの石・炎症・腫瘍など)されると血液中に増えてきます。

病気の原因や治療効果を見る検査

【 γーGTP・ALP・HBs抗原・HBe抗原・HBe抗体・HBV-DNA P・HBV-DNA・HCV抗体・HCVウイルス定量・HCVウイルス定性・HCVウイルス型 】

γーGTPは胆道系の閉塞以外にアルコール性肝障害や薬剤性肝障害で高値となります。

ALPは胆道系の閉塞、骨の病気、原発性胆汁性肝硬変という女性に多い病気で上昇します。

HBs抗原はB型肝炎ウイルスがいるかいないかがわかります。

(抗原:ウイルスが作るある種の蛋白質。抗原があればウイルスが存在していると考えられます。)

(抗体:ウイルスや細菌などの外敵が体内に進入したときに、体が外敵に反応して作るものです。外敵のどの部分に反応してできた抗体かによって、外敵をやっつけられる中和抗体と、そうでないものに分類できます。抗体陽性で有れば「現在ウイルスなどの外敵が体の中にいるかどうか」ははっきりとはわからず、「外敵が体の中にはいった」ことの証明となります。ですから、急性肝炎が治った後もある種の抗体は陽性です。)

HBe抗原・抗体はウイルスの活動性(元気に増殖しているかどうか)をみるものです。HBe抗原陽性ではウイルスの活動性が強く、HBe抗体陽性では普通はウイルスの活動性は弱いです。

(少ないながら、HBe抗原の作れない変異型B型肝炎ウイルスの存在が知られており、この変異ウイルスにかかっている人では、HBe抗体陽性でもウイルスの活動性が強いことがあります。このため、HBV-DNA P・HBV-DNAなどの検査を行います。)

HBV-DNA PはB型肝炎ウイルスが増殖するときに必要な酵素で、これが高値の場合はB型肝炎ウイルスの増殖が盛んです。(やや敏感すぎる嫌いがあり、強い炎症の後増殖能力があっても陰性になることがあります。)

HBV-DNAはB型肝炎ウイルスの遺伝子自体を調べる検査で、これが高値の場合はB型肝炎ウイルスの増殖が盛んです。定量する事でウイルスの増殖能力がわかります。

HCV抗体は、現在C型肝炎のスクリーニング検査に最適とされています。・・・世代の各抗体検査とコア抗体の検査ができます。抗体陽性例はウイルス保因者である可能性が濃厚です。

・世代の抗体検査は、偽陰性(偽陰性:ウイルス保因者であるのに陰性となる)が多かったため改良されました。・世代からさらに感度を上げ・世代の抗体検査が主流となっています。感度が良すぎるために、・世代の抗体検査は過去にC型肝炎にかかって治った(C型肝炎の既往があるといいます)人まで陽性となるという欠点があります。(・・・世代の各抗体検査で陽性であっても、必ずしもウイルスがいるとは限らず、過去の既往の結果かもしれない!)また、インターフェロン治療の効果予測や治療の結果の判定にはなんら役に立ちません。

コア抗体の検査も初期のものは感度が悪かったのですが、最近住友金属で開発されたものはほぼ感度上問題なく(C型慢性肝炎の数百人に一人が偽陰性になります)、過去の感染の既往とウイルス保因者の区別ができ(抗体価に差があり、一桁だと過去の感染の既往と考えられます)、インターフェロンの治療で著効例では抗体価が低下するので効果判定にも有pです。

HCVウイルス定量はC型肝炎ウイルスの量を測るものです。C型肝炎ウイルスの遺伝子を増幅して測定しています。プローブ法とPCR法の二種類があります。感度はプローブ法よりPCR法の方がよいのですが、それでもPCR法でも偽陰性があることはよく知られています。インターフェロン治療の効果予測に主に用いられ、著効(著効:完全にウイルスが排除されて、炎症も治まり、病気の進行も停止し、一応肝炎は完治したと考えて良い)する率はプローブ法で10Meq/ml以上では10%にもならず、10〜1Meq/mlでは20〜30%、0.5Meq/ml以下では80%ぐらいとされています。治療効果判定には不向きです。両検査とも検査値にぶれが出ますので、インターフェロン治療前に数回は測定した法がよいでしょう。

1Meq/mlは血液1ml中にウイルスが100万個いるということです。)

HCVウイルス定性検査はPCR法の定量検査よりさらに感度が約10倍良くなっています(少ない量でも検出可能)。それでもなお偽陰性があります。(検査会社によって多少検出感度に差がある場合があります。近日中に三菱化学ビーシーエルやロッシュよりさらに感度の良い方法が発表される予定です。)この検査は、ウイルスがいるかいないかを調べるときや、インターフェロンの治療効果判定や効き具合を調べる時に使用します。

(インターフェロン療法の効果判定では、治療終了後6か月以上の間HCV-RNA定性検査で陰性かつGPT値の正常な状態が続いた場合に著効と判定されます。つまり肝炎はほぼ治ったと考えて良いでしょう。)

HCVウイルス型検査もインターフェロンの治療効果予測に使用します。

型の分け方には「遺伝子によって型を分ける方法」と「血中の抗体によって型を分ける方法」の二通りの方法があります。保険適用となっていますのは後者で、これはグループ1とグループ2の二つに分けられます。

このグループ1の中に遺伝子型の1a型(・型)、1b型(・型)が入っており、日本人では1a型はほとんどおられず、1b型が7割でこの1b型はインターフェロンが効きにくい型です。1b型は血液中のウイルス量も多い方がほとんどです。

グループ2の中には遺伝子型の2a(・型)、2b(・型)のタイプの方がおられ、2aの方は非常にインターフェロンの治療が効きやすく、ウイルス量の少ない方が多いです。2aの方は日本のC型肝炎の方の内2割ぐらいおられます。2bの方のインターフェロンの治療の効き易さは、1bと2aの間です。たとえ、1b型であってもEイルス量の少ない方ではウイルスを完全に排除できる確率が高いということもわかっています。

(最近、新聞などで1bの野生型は、インターフェロンが無効となっておりました。1bとは、この遺伝子による分類による型です。1b型の遺伝子の内NS5と呼ばれる部分の遺伝子の配列に変異のある変異型ではインターフェロンが効きやすく、変異のない野生型では効きにくいとされています。この、効く効かないの意味は、完全にウイルスの排除ができるかできないかであって、その他の効果の有無は検討されていません。)

ウイルス型で病気の予後に差があるとの報告もありますが、あまり差はないとお考えになっておかれて良いと思います。また、ウイルス量の多寡と病状にもなんら関係はありません。(ウイルスが多いから病気が進行しやすいとか病気が進行しているわけではありません。)

(すたれてしまった検査、25AS:インターフェロンによってできる抗ウイルス物質の一つです。インターフェロンの治療効果の指標となるとされてきましたが、臨床的にはあまり有用ではなく、現在は殆ど調べられていません。)

腫瘍について調べる検査

AFP・PIVKA・ 】

AFP・PIVKA・は肝癌ができた時に上昇する事が多いため腫瘍マーカーと呼ばれます。ともに、癌細胞で作ることが多く、正常細胞で作られることの少ないものです。AFP・PIVKA・自体は体に悪影響を与えません。

AFPの正常値は20ng/ml以下です。肝細胞が増殖しているときにも増加し慢性肝炎や肝硬変だけ(肝癌はなくても)でも100以上になることもあります。(近年AFPをさらに細かく分けることが可能となり、肝癌に特に出やすいAFPが検査可能となっています。)また、早期の肝癌では正常値の場合も多くみられます。

AFPが高値の人は低値の人に比べて肝癌ができやすいことも知られています。

PIVKA・の正常値は0.06AU/ml以下です。AFPが正常値でもPIVKA・が異常値の方もおられます。(もちろん逆の場合もあります。)ワーファリンなどの抗凝固剤をのんでおられる場合に高値となる場合があります。(近日中にさらに感度が良くなります。これにより、感度は相当良くなります。)

(肝癌の早期発見につながる場合もあります。しかし、癌が小さいときはもちろん大きいときでも陰性の場合がありなす。このため両方の検査をするのですがそれでも限界があります。ですから、早期発見のためには超音波等の画像診断は欠かせません。)

尿と便でわかる検査

y 尿検査 】

肝臓が悪いと尿の色が濃くなります。尿の色の原因物質の一つは、腸管に排泄されたビリルビン(前に御説明して有ります)が腸管内の細菌に分解されてできたウロビリーノーゲンです。ウロビリーノーゲンは腸管で吸収されこの一部が尿中へ排泄されるため(腸管で吸収されたウロビリーノーゲンの大半は肝臓に吸収され、再び胆汁として排出されます。)、ウロビリーノーゲンが増加すると尿の色が濃くなります。血液中のウロビリーノーゲンを処理する肝臓の機能が弱まると尿中のウロビリーノーゲンが多くなり、尿の色が濃くなります。

前述しましたように、総ビリルビン(T.Bil)とは、血液中の間接型ビリルビン(I.Bil)と直接型ビリルビン(D.Bil)の合計値からなっています。間接型ビリルビンは赤血球が壊れてできたビリルビンで、これが肝臓で水に溶けやすいかたちに変えられたものが直接型ビリルビンです。胆管の閉塞が強かったり肝障害が強いと、直接型ビリルビンが血液中に逆流し、尿中のビリルビンが多くなり、尿の色が濃くなります。

肝臓は筋肉とともに血糖を取り込む(結果として血糖値は下がる)重要な臓器です。肝硬変などでこの働きが弱まると糖尿病を併発します。このため、尿糖が陽性となってくる場合があります。

【 便検査 】

肝臓の働きが低下したり、胆管が閉塞してくると、何度も出てくるビリルビンが腸内に排出されないため、便の色が白っぽくなります(便の色のもとはビリルビンです)。

画像検査

【 超音波検査・CT波検査・MRI検査・血管造影検査 】

超音波(エコー)検査・コンピュータ断層(CT)検査・磁気共鳴画像(MRI)検査など簡単に外来で行える検査から、血管造影検査などのように入院の必要な検査まで有ります。

【 超音波検査 】

超音波検査は、放射線も使わず、苦痛もなく、もっとも手軽に行える検査です。体への負担も無く、無害なので、手軽に繰り返し行えます。しかし、きわめて有用な検査です。

慢性肝炎の進行度の推測と肝癌の発見のために主に行います。

 肝臓の線維化が進む(病気が進行する)と、脾臓が腫れ、肝臓は表面がでこぼこになり、辺縁が鈍化し、全体的に萎縮した感じになってきます。このような状態にどこまでなっているか(つまり、肝硬変へどこまで進行しているのか)の程度を超音波検査でみてゆくことで、病状を的確に把握するとが可能です。

また、肝臓にできた直径1〜2cm程度の組織の異常を発見することができ、肝癌の発見に有用です。しかし、肝臓全体が必ずしもしっかり見えるわけではなく、死角になりやすい場所があり注意が必要です。

腹水や胆管の狭窄、胆石などの有無も診断することができます。

CT波検査 】

CT検査は、レントゲンを使用し、体の断層をみる検査です。超音波検査の死角の場所も良くわかります。肝癌の診断や、腫瘍の個数や場所の確認などに有用です。腫瘍が1cm未満で小さかったり、早期の場合には発見できない場合があります。肝癌の治療効果判定にも有用です。(肝癌は普通血管が豊富なため、造影剤を使用すると血管の豊富な肝癌などは白っぽく造影されます。)

腎疾患のある方や、以前に造影剤で気分の悪くなった方、妊娠している可能性のある人は主治医にその旨お話下さい。

MRI検査 】

CT検査同様、主に体の断層をみる検査です。CT検査同様造影剤を使用する場合もあります。磁気を使用しますので、体内に金属やペースメーカーの入っている方は、事前に主治医にご連絡下さい。

【 血管造影検査 】

血管造影検査は、肝臓に腫瘍が疑われる場合におかないます。カテーテルという細い管を足の付け根から動脈内に入れて、その先端を肝臓に入っている動脈まで送り、造影剤をこの管から流して検査します。検査後、止血のための安静が約半日必要ですので、入院が必要です。検査時に悪性の腫瘍が疑われた場合には、この管を通して各種の薬を腫瘍に注入し、治療する場合があります。

各種の画像診断について御説明いたしました。この他にも、血管造影検査とCT検査や超音波検査を同時に行ったりして、良い成績を出しておられる所もあります。一つ一つの検査では(特に早期の腫瘍では)しっかりと診断がつかない場合があります。どの検査が一番良いかというものではなく、それぞれの検査を組み合わせることで、より正確な診断をつけることが大切です。