微量金属と慢性肝障害

 はじめに

種々の慢性肝炎で、病気の進行とともに肝臓内の鉄や銅が増加し亜鉛が低下する事が知られています。

鉄は銅とともに肝臓での活性酸素の有力な発生源となっています。活性酸素は細胞を直障害するばかりでなく遺伝子障害も引き起こし、肝臓病を進行させるばかりでなく肝癌の発生にも関係しています。

銅は線維化を引き起こす酵素に必要な金属です。

人や動物では、鉄や銅などが肝臓に蓄積する病気があり、肝硬変や肝癌に進行することが知られています。一方、これらの金属を取り除いてあげると病状は改善します。

亜鉛は繊維を溶かす酵素に必要な金属で、亜鉛を大量に内服させた動物では肝障害の進行が軽くてすみます。

 

なぜ慢性肝炎にとって鉄が問題なのか

肝炎と鉄

慢性肝炎(特にC型)では、肝臓内の鉄の量とGPTや血液中のフェリチン(肝臓内の鉄の量と関連がある物質)とが相関しています。慢性肝炎でなぜ鉄が肝臓に貯まるのかは良く解っていませんが、鉄の量と炎症の強さには明らかに関連があります。さらに、鉄を取り除くと血清フェリチンとGPTが低下します。

C型肝炎に罹っているチンパンジーに鉄を経口負荷すると肝病変が増悪することも報告されています。

以上より、慢性肝炎では鉄が肝障害の重要な役割を担っていると考えられ、瀉血などで肝臓内の鉄を減らすことが肝疾患の治療として注目されています。

 C型肝炎の瀉血治療

瀉血により肝臓中の鉄を減らすことにより、GPTの低下・肝臓内の炎症の軽減・活性酸素障害の軽減のみならず、長期お観察では病気の進行を遅らせています。

これにより、慢性肝炎が肝硬変へ進行するのを抑えるのみならず,発癌予防にもつながるのではないかと期待されています。

 治療としては、一回数百ccの瀉血を 月に数回行い、血清フェリチン(鉄と関係の深い物質)を正常よりやや低めの1020μgml位にします。さらに、鉄を増やさないため 食事で取る鉄分量は、7mg以下/日が目安です。

 最近は、食事中の鉄分を減らすだけでも効果があるとの報告も見られています。(貧血やビタミン不足などの注意が必要です。)

 C型だけでなく、B型や非AB型肝炎でも有用です。

その他の微量金属

 銅は、繊維化を進める(エラスチンやコラーゲンの架橋)モノアミンオキシダーゼやリジルオキシダーゼなどの酵素に必要です。過剰に蓄積すると、肝硬変・肝癌の元となります。

逆に、欠乏すると 貧血・好中球減少・などが見られます。

 亜鉛は、繊維を溶かす酵素に必要で、高濃度に亜鉛を与えた動物では肝硬変が起きにくいとされています。