肝臓疾患に対する微量元素「銅」の役割


 生体内における微量元素の重要性は古くから認識されています。

近年、分析機器ならびに技術の発展に伴い、比較的正確に生体内微量元素の測定が可能となりその役割が検討され、各種臨床領域における過剰症・欠乏症などが明らかになりつつあります。

今日は、人での必須性が確認されている銅について説明致します。

生体中の金属の中で銅は鉄、亜鉛、に次いで多く存在し肝臓,脳,心臓,腎臓などは銅の多い臓器として知られています。

銅の機能は、酸素の運搬・電子伝達・酸化還元・酸化添加など広範な生体内諸反応の触媒としての大切な役割を担っています。

しかし過剰の銅が蓄積しますと細胞障害等が起こり発癌の原因となると考えられています。


銅と肝障害の関係

肝臓障害では慢性肝炎から肝硬変と病態が進展すると銅排泄障害が起き、その結果血清・肝組織中の銅濃度は有意に増加しています。

肝炎が慢性化し、慢性活動性肝炎、肝硬変へと進展する過程の重要な形態学的変化として肝線維増殖があります。肝線維の増殖は、肝内の血液循環に影響を及ぼし、肝細胞への栄養および酸素の供給低下をもたらして肝細胞障害を引き起こします。線維の増殖が続くと肝硬変・肝癌へと進展していくことになります。

このような肝内線維の主成分をなすものはコラーゲンで、銅はコラーゲンの熟成に必要なリジルオキシダーゼとモノアミンオキシダーゼといわれる酵素に0.14%含有されているコファクター(補酵素)として肝線維に対して促進的に作用します。

銅は、肝線維化促進作用だけでなく最近の発表では肝細胞癌発生のイニシエーション(契機)として作用しています。肝組織中の銅はメタロチオネイン(たんぱく質)と結びつきこれがフリーラジカル(毒素)のなかで最も毒性の強いフリーラジカルであるヒドロキシラジカルを生成して、DNA(遺伝子)を損傷させる原因となり、遺伝子の狂いがここで起き、結果として肝細胞癌の発現に関与しているという可能性が高いようです。

以上のように銅は、必要以上に蓄積すると線維化・癌化が進む原因となり、肝硬変・肝癌の成因の1つとなると言われています。
 実際、先天的に銅がたまり肝硬変・肝癌に進行する疾患にウイルソン病がありますが、この疾患は銅を排出させることで病状の改善が見られています。

 これらのことから過剰に蓄積した銅を排除することは、肝硬変・肝癌予防につながるとも考えられています。

 


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