C型肝炎ウイルスに関する検査
C型肝炎ウイルスに関する検査の方法は次のように進みます。
ウイルスに感染している可能性があるか(感染の可能性があれば)→ウイルスが存在するか(存在していれば)→インターフェロンの効果予測はどうか(治療すれば)→インターフェロン治療効果はあったか。
の順に調べます。
ですから、この順で検査についてご説明しましょう。
ウイルスに感染している可能性があるかに関する検査
C型肝炎ウイルスに対する抗体検査がそれです。(HCV抗体検査)
C型肝炎ウイルス(HCV)は各種のタンパク質を作っています。これら蛋白質は抗原(体内で異物と認識される)となり、体内ではこの抗原に対し抗体が作られます。
どの蛋白質に対する抗体を検査するかで、各種抗体検査があります。スクリーニング検査としては、数種類の蛋白質に対する抗体を同時に測定し感度を上げたもの(第2、第3世代)や、核(コア)蛋白だけの抗体(コア抗体)を測定するものがあります。
これらの抗体が陽性であれば、「C型肝炎ウイルスが体に入ったことがある」ということです。陽性であれば、多くの場合C型肝炎ウイルスが体の中にいると考えられます。
問題点として、感度が良すぎるため既感染だけ(過去に急性C型肝炎に罹り治った=ウイルスは既にいない)でも要塞になる場合があり注意が必要です。コア抗体はインターフェロン治療が著効した場合抗体価が低下して行きます。極めて稀に、C型肝炎の患者さんでHCV抗体が陰性の方がおられます。
ウイルスが存在するかに関する検査
C型肝炎ウイルスの遺伝子(RNAだけのウイルスですので、HCV−RNAを測定します)の測定やC型肝炎ウイルスの作る蛋白質(現在即手押されているのは核蛋白質=コア蛋白質だけです)の測定があります。
正確で(疑陽性がなく)一番感度のいい検査は「アンプリコア定性(アンプリコアHCV)」検査と呼ばれているものです。この検査はPCRという遺伝子増幅技術を利用したものです。量は測定できませんのでインターフェロンの効果予測には向きません。
インターフェロンの効果予測に関する検査
C型慢性肝炎に対するインターフェロン治療効果は、ウイルスの型と量で決まります。
ウイルスの型の分類
ウイルスの型の分類は、serogroup(セログループ)と呼ばれる抗体反応による違い(正確には抗体の反応しているウイルスの蛋白質の違い)による分類と、genotype(ジェノタイプ)と呼ばれる遺伝子配列の違いによる分類とがあります。
現在保険で測定可能なのはセログループ(SG―1と2に分類されます)ですが、未保険のジェノタイプのほうが分類が細かく(I、II、III、IV型の4群に分類され、効果予測にさらに有用)最初に開発されていました。
ウイルスの型が2型と言われた場合、SG―2(インターフェロンが効き易いタイプ)かジェノタイプII型(インターフェロンが効き難い)かなど一部で混乱が見られていますので注意が必要です。
ウイルス量の測定
C型慢性肝炎でウイルス量を測定する目的は、インターフェロン治療効果予測やインターフェロン投与開始のタイミングを計るためです。
決してウイルスが多少増えたから病気が悪くなったとか癌になりやすくなった訳ではありません。ウイルス量と病状とは関連はなく、肝炎の落ち着いている方の中にもウイルス量の多い方がおられます。
C型肝炎ウイルス量を測定する方法は大きく、「血液中のウイルス遺伝子(HCV-RNA)の数を測定する方法(アンプリコア定量(アンプリコアHCVモニター)・DNA
probe法)」と「血液中のウイルスに含まれている蛋白質(HCVコア蛋白質)の量を測定する方法」の2つに分けられます。
アンプリコアHCVモニター:IFNの有効率が高いのは100K
copies未満です。
(10の5乗copies/ml未満)
DNA probe法:IFNの有効率が高いのは1Meq/ml未満です。
(10の6乗Eq/ml未満)
コア蛋白質: IFNの有効率が高いのは30pg/ml以下です。
インターフェロン治療効果に関する検査
各種C型肝炎ウイルス量測定法の比較
再現性:(同じ検体を同じ日に2回測定したり違う日に測定して測定結果にばらつきが出るか):遺伝子の検査である、アンプリコアモニター(PCR法)では約20〜30%のぶれが、DNA
probe法(プローブ法)でも約10〜20%のぶれがあるようです。遺伝子が不安定であるのが原因でしょうか。
HCVコア蛋白質の検査は約10%以下で少ないようです。遺伝子ではなく安定な蛋白質を測定しているためでしょう。
再現性ではHCVコア蛋白質の検査が良いようです。ともかくウイルス量の検査は多少のぶれのある検査なので、何度か測定する必要があるようです。
測定感度:どこまで少ないウイルスを検出できるかを見るものです。インターフェロン治療効果判定(ウイルスが完全に消えたかどうかの判断)に有用です。
感度が良い ← ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― → 感度が悪い
アンプリコアHCV >アンプリコアHCVモニター >HCVコア蛋白 >DNA
probe法
検出限界100IU/ml 1000
IU/ml 8pg/ml 0.35Meq/ml
セログループ間で感度・特異性にほとんど差はありません。