強力ネオミノファーゲンCについて

 

最近私たちの講演会等ででよく「強力ネオミノファーゲンC(以下 SNMC)」という治療薬のお話を聞かれると思います。今回は、このSNMCについてのお話をしたいと思います。
 SNMCは、慢性肝炎の炎症をとり、病気の進行を抑えるために広く用いられています。以前は、1日に 2〜3アンプルしか保健では認められていませんでした。しかし、さらに大量に使った方がより有効であることが認められ、平成6年12月6日 に厚生省より新たに次のように認可されました。
慢性肝疾患に対しては1日1回40〜60mlを静脈内に注射又は点滴静注する。年齢、症状により適宜増減する。なお、増量する場合は1日100mlを限度とする。
 つまり、GOT・GPTの下がりが悪い場合は、1日100ml(5アンプル)まで増量しての使用が認められました。この点が、十分に認識されていないため、一部の医療施設では未だに1日に 2〜3アンプルしか使えないと思っておられるところがあるようです。
 この薬の副作用としては、主に電解質の異常(カリウムの低下)と血圧上昇です。カリウムが低下すると、脱力感や筋力低下などが起こることがあります。このため、SNMC使用中は、たまに血圧測定と採血で電解質のチェックをしなければなりません。(病院での血圧が高めにでることが多いので、ご自宅での血圧測定をお勧めします。)
 また、甘草を含んでいる漢方薬や、グリチロン錠、ラシックスなどの利尿剤(アルダクトンという利尿剤は逆に副作用を抑えます)は副作用を出やすくする可能性があります。
 さて、副作用はこのように大した物は有りませんが、その効果やお値段はいかがでしょうか。
 効果としては、100ml(5アンプル)投与によりGOT・GPTの低下のみならず、γGTPの低下や、組織学的にも(肝生検で調べても)改善することが知られています。また40ml(2アンプル)投与にて効果のなかった症例でも、100ml(5アンプル)へ増量すると効果があることも知られています。もちろん、インターフェロンが効かなかった方にも効果があります。
 40ml(2アンプル)を4週間続けてもGOT・GPTは低下しい例でも、100ml(5アンプル)に増量してさらに4週間治療するとGOT・GPTは低下します。このことから、SNMC大量(100ml)が有用なことがよくわかります。
 GOT・GPTを低下させると発癌率が下がることは知られており、組織学的な改善は肝硬変への進展を抑えるものと思われます。
 値段も、インターフェロンの1/100以下と格安で、副作用も少なくことより、SNMCは非常に有用な慢性肝炎の治療薬となっています。(もちろん、インターフェロンのようにウイルスの完全な排除は望めませんし、静脈注射に通院しなければならないという欠点もあります。)
 次に、どこまでGOT・GPTを低下させればよいか、という問題があります。どこまで下げれば十分かというはっきりした結論はまだでていません。我々は、GOT・GPTは低ければ低い程良いとおもっています。せっかく注射をするのであれば、GOT・GPTがせめて40〜50に、できれば正常値まで持っていきたいと思っています。そしてGOT・GPTが上昇しないことを確認しながら、徐々に減量し、投与を中止します。再燃した場合は再度治療を行います。再燃した場合もSNMCは初回同様有用です。
 また、治療中に数日間ぐらい治療を休んで旅行などに行かれても全く問題ありません。