コンセンサス・インターフェロン
  

C型肝炎、効果5倍
〜遺伝子組み換えインターフェロン 年内発売の見込み〜
 遺伝子組み換え技術でつくった新型インターフェロンが、治りにくいタイプのC型肝炎患者に、いま使われているインターフェロンの約5倍の効果を発揮することが国内の臨床試験でわかった。山之内製薬が厚生労働省に新薬承認申請中で、秋には承認、年内に発売される見込みだ。
 この新薬は米ベンチャー企業アムジェンが開発した「コンセンサスインターフェロン(CIFN)」。
 インターフェロンはウイルスに感染した動物の細胞が出すたんぱく質で、ウイルスの増殖を抑える働きがある。今回は、人間の体内でつくられた13種類のインターフェロンのアミノ酸配列を調べ、新しい配列のものを遺伝子操作で合成した。
 試験をしたのは鈴木宏山梨医科大名誉教授ら。患者は127人。インターフェロンが効きにくい型のウイルスに感染し、しかもウイルス遺伝子の数が血液1ミリリットル中10万個以上と多い人たちだった。
 二つのグループに分けた半年間の比較試験で、これまでの型のインターフェロンを使った61人でウイルスが消えたのは2人(3.3%)だけ。一方、CIFNで治療した66人では11人(16.7%)から完全に消えた。
 特に10万〜30万個の患者グループで効果が目立ち、43%からウイルスがいなくなった。副作用は従来のものとほぼ同じだった。
 「これまでウイルスが10万個以上の場合、ほとんど効果がなかったが、CIFNは30万個、50万個の患者でも治療が期待できる。」と話す。
(2001年7月22日(日) 朝日新聞)

 

◆構造
既存IFNα製剤とほぼ同数の166個のアミノ酸残基からなる。その配列は、多数の既存IFNαのサブタイプ(亜種)のうち、各位置で最も頻繁に観察されるアミノ酸を持つように"コンセンサス(一致)"させてある。コンセンサスインターフェロン(一般名:インターフェロンアルファーコン-1/rIFN-αCon1)は、このアミノ酸配列に基づく合成DNAを用い、遺伝子組換え型大腸菌発現系にて産生させたものである。

 

◆設計思想
既存IFNαには、それぞれ活性強度の異なる13種類のサブタイプが知られている。これらサブタイプのそれぞれのアミノ酸配列について、各位置で出現頻度の高いアミノ酸を選択すれば有用性の優れるIFNを創薬できるであろうという仮説のもとにデザインされた。

 

◆日本での臨床試験結果
  
高ウイルス血症患者における有効性
難治性と言われるジェノタイプ1b高ウイルス血症(HCV−RNA量100Kcopies/mL以上)に対し、著効を示した。完全著効率(CR率)は16.7%(11/66例)と高く、その中でも特に100〜700(Kcopies/mL)では27.5%(11/40例)と高い効果を認めた。
また、従来のIFNα製剤との比較試験でも、rIFN-αCon1の抗ウイルス作用が優れていることが示唆された。ジェノタイプ1b高ウイルス血症に対する各種IFNα製剤の治療成績を比較すると、既存IFNα製剤で0〜8.6%であったCR率が、rIFN-αCon1では16.7%となった。
  
低ウイルス血症患者における有効性
HCV−RNA量100Kcopies/mL以下の低ウイルス血症に対してもCR率73.3%であった。
  
IFN再治療患者
「かつてIFN治療を受けたものの、最終的にウイルス駆除に至らなかった患者」においても高い有効性が示唆された。再治療患者のHCV-RNAの陰性化率は40.0%(14/35例)であった。
  
安全性
有害事象の多くはインフルエンザ様症状、消化器症状であり、既存のIFN製剤と比較して、本剤に特有な有害事象、本剤に高頻度に認められる有害事象などは認められなかった。
  
(鈴木 宏 他.:肝胆膵.43(2):281.2001)

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